離婚成立までの生活費は?
離婚成立までの生活費(婚姻費用)
離婚を前提に別居している場合でも、離婚が成立するまでは家族の生活の費用は、夫婦がそれぞれの財産、収入等一切の事情に応じて分担することになっています。
例えば、夫が働いて生活を支えてきた場合、夫は、別居中の妻子に夫と同程度の生活ができる生活費(婚姻費用)を渡す必要があります。婚姻費用について、話し合いがつかない場合は、家庭裁判所へ婚姻費用分担の調停を申立てることができます。調停でまとまらない場合は、審判で額を決定します。
婚姻費用の額
婚姻費用は、夫婦が共同生活を維持するために必要な費用です。
別居していても、婚姻関係が継続していれば、相手方に婚姻費用の分担を請求することができます。
婚姻費用は、夫婦の収入、子どもの数や年齢を基礎とし、それぞれの夫婦の事情等も考慮して決まります。裁判所が算定表を公表しています。
平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告
財産分与はどうなるの?
財産分与
財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げた財産を、離婚をする際に分けることです。財産分与には、婚姻中夫婦の協力によって得た財産の清算(清算的財産分与)と、離婚後の生活の保障(扶養的財産分与)という意味があります。
【清算的財産分与】
婚姻中の協力によって得た財産の清算です。婚姻後に形成された資産(不動産、預貯金など)について分与されます。
分与の割合は、どちらがどの程度財産形成に貢献したかによって決まります。貢献の割合については、夫婦の財産は2分の1ずつの共有という考えが原則です。
【扶養的財産分与】
清算すべき財産がない場合でも、例えば離婚後夫は収入があるが、妻は今まで専業主婦であったり、老齢や病気である等のために離婚後の自活能力がない場合、その状況により離婚後の生活の保障などを財産分与として請求できる場合があります。
財産分与の請求ができる期間
離婚のときから2年を経過すると、財産分与を求めることができなくなります。
財産分与の対象
婚姻期間中にその協力によって得た財産が、財産分与の対象となります。夫婦どちらの名義になっているかにかかわらず、協力によって得た財産は対象です。現金、預貯金、不動産、自動車、有価証券、保険、退職金などが対象となります。
婚姻前から有している財産や、婚姻中であっても相続や贈与により取得した財産は、夫婦が協力によって得た財産とはいえず、財産分与の対象となりません。
慰謝料はどうなるの?
慰謝料
離婚の際は当然に慰謝料を請求できると思っている方もいらっしゃいますが、慰謝料は、不貞、暴力、一方的な性交渉の拒否などの不法な行為によって離婚せざるを得なくなった精神的苦痛に対する償いですので、当然に請求できるものではありません。単なる性格の不一致等では、請求できない場合がほとんどです。
慰謝料の額は、離婚に至る経緯、離婚の有責性の程度、背信性の程度、精神的苦痛の程度、婚姻期間、支払能力、未成年の子の有無などのさまざまな事情を考慮し、決められます。100万円から300万円くらいが相場です。
年金分割はどうなるの?
年金分割
離婚後、婚姻期間中の年金の保険料納付記録を分割する制度です。年金分割は、厚生年金が対象となります。
年金分割の対象となるのは、これまで支払ってきた厚生年金保険料の算定の基礎となった標準報酬額であり、国民年金(基礎年金)は対象外です。また、各種企業年金、国民年金基金やその他の私的年金は、年金分割の対象とはなりませんが、財産分与として検討することになります。
年金分割には、①合意分割制度と②3号分割制度があります。
合意分割制度とは、合意は又裁判手続きで分割の割合を決めて年金事務所に請求し、厚生年金の保険料納付記録の最大2分の1までを少ない方に分割できる制度です。
3号分割制度とは、平成20年4月1日以降に、第3号被保険者期間がある場合、第3号被保険者が年金事務所に請求すれば、保険料納付記録の2分の1が分割される制度です。相手方の同意はいりません。平成20年4月1日以前の分割も求める場合には、合意分割となります。
離婚後2年以内に、請求を行います。
子供の親権はどうなるの?
子供の親権
親権とは、未成年の子どもの財産を管理したり、子どもと同居して身の回りの世話などをしたりする権利です。離婚をする際に、親権者をどちら一方に定めなければなりません。当事者の合意があれば、父母どちらでも自由に定めることができます。双方が親権を主張して譲らず合意ができない場合、裁判所が決めます。
子どもが小さい場合、女性が親権者となることが多いです。
いったん決まった親権を、後から変更することもできます。しかし、親権者が変われば、子どもの生活環境が変わり子どもにとっては負担となることが多いため、家庭裁判所において親権者変更の調停又は審判手続を経る必要があります。そのため、どちらか親権を持つかは安易に決めるのではなく、十分考えて決めることが必要です。
《裁判所での親権者の決め方》
どちらを親権者とすることが子どもの利益になるかが判断基準です。監護の実績や現状、父母の事情(双方の経済力、子どもに対する愛情、監護補助者の有無など)、子どもの事情(子どもの年齢と母親の必要性、子どもの希望、兄弟姉妹との別離など)を総合的に考慮して判断されます。子どもが15歳以上の場合は、本人の意思を最大限尊重して決められます。
監護権はどうなるの?
監護権
親権には、未成年の子どもの財産を管理する権利(財産管理権)と、子どもと同居して身の回りの世話などをして養育する権利(身上監護権)がありますが、そのうち、身上監護権について、親権者と別に監護権者を定めることができます。離婚届には、親権者を記載する欄はありますが、監護権者を記載する欄はありません。そのため、親権者と別に監護権者を定めた場合、後に争いにならないよう、書面に残しておくのがよいです。
子供の養育費は?
子供の養育費
離婚しても子どもの親であることには変わりはないため、支払わなければなりません。子どもがいる場合には、離婚にあたり、できる限り養育費を取り決めることが望ましいでしょう。両親の協議で決めることができた場合には、公正証書を作成して履行の確保をお勧めします。話し合いがまとまらない場合や、養育費を決めずに離婚してしまった場合には、家庭裁判所に養育費の調停を申し立てます。
養育費は、夫婦の収入、子どもの数や年齢を基礎とし、それぞれの夫婦の事情等も考慮して決まります。
裁判所が算定表を公表しています。
平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告
《増額・減額したいとき》
養育費の支払いは長期間となるため、一度決めた養育費も、事情が変わったら、増額減額を申し出ることができます。例えば、会社の倒産や失業、親や子の長期入院等です。話し合いがつかない場合は、家庭裁判所に養育費増額・減額の調停の申立てをすることができます。調停でも話し合いがつかない場合は、審判に移行します。審判で額の変更が認められるには、「著しい事情の変更」が必要とされます。 支払期間の延長等も申し出ることができます。
離婚後や別居中に子供に会えるの?
面会交流
離婚後または別居中に、親権者とならなかった親が子どもと会うことです。子どもにとっては親であることには変わりなく、面会交流を認めることが必要と考えられています。
当事者の話し合いにより、面会交流の回数や場所、方法などを決めます。話し合いがつかない場合、家庭裁判所に面会交流に関する調停を申し立てます。調停ではまとまらない場合、審判を申し立てます。
裁判所が面会交流の可否を決める場合、子どもの事情、監護する親の事情、監護しない親の事情、子と親の関係等が考慮されます。
調停では、家庭裁判所調査官による調査や、試行的面会交流が行われることがあります。これらの結果は、審判の際に考慮されます。
調停や審判で面会交流について決まったのに、相手方がこれを守らず面会交流ができない場合には、裁判所に履行勧告や間接強制の申し立てをすることができます。
履行勧告とは、家庭裁判所が、義務者(子どもを会わせる側)に対して、取り決めを守るように書面等で通知します。もっとも、履行勧告に反して面会交流を行わなくてもの、罰則等はありません。
間接強制とは、履行勧告に応じない義務者に対し、「面会交流を行わない場合、1回につき○万円を支払え」などと間接強制金を課すことで、お金を払いたくないと考える義務者に面会交流を行わせようとするものです。
離婚後の手続きはどうするの?
届出について
離婚成立時に離婚の効力は生じますが、その後、戸籍役場へ届出を行う必要があります。
協議離婚の場合、離婚届を提出します。
調停離婚や裁判離婚の場合、離婚成立のときから10日以内に調停調書又は判決の謄本を添付し、戸籍役場に届出を行います
DVはどうしたらいいの?
DV事案
早期に保護命令を申し立てると良いと思います。裁判所が出す保護命令には
①被害者への接近禁止命令
②退去命令
③電話等禁止命令
④子どもへの接近禁止命令
⑤親族等への接近禁止命令
があります。