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トップ > お知らせ > 離婚で相手が財産を隠しているときの調べ方|調査嘱託・弁護士会照会と熊本家庭裁判所での進め方を弁護士が解説
2026.10.24コラム
離婚で相手が財産を隠しているときの調べ方|調査嘱託・弁護士会照会と熊本家庭裁判所での進め方を弁護士が解説

「夫の口座には、もっとお金があるはずなのに」「別居してから急に預金が減っていた」。財産分与の話し合いに入ると、相手が示してきた資産の一覧に納得できず、不安になる方は少なくありません。財産分与は原則として夫婦が婚姻中に築いた財産を分ける手続きですから、そもそも対象となる財産が分からなければ、公平な分け方の話にもなりません。そこで本記事では、相手が財産を隠していると感じたときに何をどこまで調べられるのか、自分でできる確認から弁護士会照会・調査嘱託といった法的な手段までの順番を、熊本家庭裁判所での実務を踏まえて解説します。

財産分与の財産調査のイラスト

まず押さえたい「どの時点の、どの財産」が対象になるか

財産分与の対象は、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産です。名義がどちらであっても共有財産として扱われるのが原則で、預貯金・不動産・保険の解約返戻金・株式や投資信託・自動車・退職金などが含まれます。住宅ローンのような負債も、婚姻生活のために負ったものであれば考慮されます。詳しくは離婚の財産分与とは?対象になる財産・ならない財産と2分の1ルールで整理しています。

そして基準となる時点は、実務上は別居した時点とされることが多いです。つまり「別居した日に、どこに、いくらあったか」を示す資料が中心になります。別居から時間が経つほど、通帳の記載も記憶もあいまいになりますので、早い段階で資料を押さえておくことが後の話し合いを楽にします。もっとも、どの時点を基準とするかは個別の事情により異なります。

よくある「見えにくい財産」の形

意図的に隠している場合に限らず、単に相手が申告し忘れている財産もあります。ご相談のなかでよく出てくるのは、次のようなものです。

  • ネット銀行の口座(通帳も店舗もないため、郵便物からも気づきにくい)
  • 給与振込口座とは別の地方銀行・信用金庫・労働金庫・JAの口座
  • 子どもや親の名義になっている預金(実質的な原資が夫婦の収入であれば争点になり得ます)
  • 学資保険・個人年金・養老保険などの解約返戻金
  • 証券口座の株式・投資信託、確定拠出年金、暗号資産
  • 会社の持株会・社内預金・近い将来の退職金

退職金の扱いは判断が分かれやすいところですので、退職金は離婚の財産分与の対象?計算方法と請求の注意点も併せてご覧ください。

自分でできる確認から始める

法的な手段は、手がかりがまったくない状態では使いにくいという特徴があります。そのため、まずは手元で確認できることから始めます。

  • 通帳の取引履歴(他行への送金・保険料や証券会社への引落し・貸金庫手数料の記載)
  • 自宅に届く郵便物(金融機関・保険会社・証券会社の封書、取引残高報告書)
  • 確定申告書や源泉徴収票、住宅ローンの返済予定表
  • 不動産の登記事項証明書(法務局で手数料を納めれば誰でも取得できます。熊本県内の不動産は熊本地方法務局とその支局・出張所が扱います)
  • 年金分割のための情報通知書(年金事務所に請求すると、相手の厚生年金の記録が分かります)

ここで気をつけたいのは、集め方です。相手のスマートフォンやパソコンを無断で操作してデータを持ち出す、相手宛ての郵便物を勝手に開ける、といった行為は、別の法的な問題を招くおそれがあります。自分が同居している自宅で目にできる範囲の資料を、写真に撮って残しておく程度にとどめ、判断に迷う集め方は事前に弁護士へご相談ください。

法的に調べる手段は段階がある

相手の財産を調べる手段の進み方
図:相手の財産を調べる手段の進み方

自分で分かる範囲を超えるときは、次の手段を順に検討します。

求釈明(任意の開示請求)は、交渉や調停の場で「この金融機関の口座について、別居時点の残高が分かる資料を出してください」と求めるものです。強制力はありませんが、合理的な理由があれば応じてもらえることもあり、費用もかかりません。まずはここから始めるのが通常です。

弁護士会照会(弁護士法23条の2)は、依頼を受けた弁護士が所属弁護士会を通じて金融機関などに照会する制度です。相手に知られずに進められる場合がある点が実務上の利点です。一方で、照会先に回答義務はあるとされるものの実際には回答が得られないこともあり、少なくとも金融機関名の特定は必要です。弁護士会に納める手数料が1件あたり数千円から1万円程度かかるのが一般的といわれていますが、これは各弁護士会の定めによるもので公的な統計に基づく確定値ではありません(2026年10月時点)。熊本県弁護士会での具体的な取扱いは、ご依頼時に個別にご確認ください。

調査嘱託は、離婚調停や離婚訴訟が始まっている段階で、裁判所から照会先に対して回答を求めてもらう手続です。裁判所を通すため回答が得られやすい一方、申立てを採用するかどうかは裁判所の判断であり、口座の支店名まで特定できていないと「調査の対象が定まらない」として採用されないことがあります。あわせて文書送付嘱託を使う場面もあります。

さらに、養育費や婚姻費用の不払いのように、判決や公正証書などの債務名義を得た後の段階では、民事執行法の第三者からの情報取得手続により、預貯金や勤務先、不動産の情報を金融機関などから取得できる場合があります。これは財産分与の話し合いの段階ではなく、回収の段階で使う手続という位置づけです。

熊本で調停・訴訟になったときの進め方

調査嘱託は、調停や訴訟が係属している裁判所に申し立てます。熊本県内で離婚調停を申し立てる場合、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所が窓口になり、熊本家庭裁判所の本庁のほか、玉名・山鹿・阿蘇・八代・人吉・天草の各支部があります。管轄や申立ての進み方は熊本で離婚調停を申し立てるには?家庭裁判所の管轄と当日の進み方で詳しく説明しています。最新の管轄は熊本家庭裁判所の公式サイトでご確認ください。

熊本で多いのは、給与振込は都市銀行、生活費は肥後銀行や熊本銀行、積立は信用金庫やJAといった形で口座が分かれているケースです。そのため、どの金融機関に照会をかけるかの見立てが結果を左右します。通帳の引落し先や相手の勤務先の給与制度、ご実家の所在地などから、照会先を絞り込んでいく作業が実務の中心になります。期日の間隔は1か月から2か月程度が通例で、回答を待つ時間も見込んで、どの期日までに何を申し立てるかを組み立てていきます(期日の間隔は事件の進行状況により異なります)。

また、別居中の生活費が足りないまま調査を待つことになると、生活が先に行き詰まってしまいます。婚姻費用の請求は離婚調停とは別に婚姻費用分担請求調停を申し立てる必要がありますので、財産調査と並行して検討することが多いです。あわせて離婚の財産分与で損をしないために|対象財産と手続きの進め方もご覧ください。

離婚後に財産隠しが分かったときはどうなるか

離婚が成立した後に隠されていた財産が判明した場合、まずは改めて財産分与を求めることが考えられます。ただし、財産分与の請求は離婚のときから2年を経過すると家庭裁判所に申し立てることができないと定められています(民法768条2項)。この期間は話し合いが続いているかどうかにかかわらず進んでいきますので、心当たりがある段階で動くことが大切です。

すでに合意書や公正証書を作っている場合は、重要な前提に誤りがあったとして合意の効力を争う、あるいは財産を隠した行為について損害賠償を求める、といった組み立てを検討することになります。もっとも、いずれも立証のハードルは低くありません。離婚の前に資料をそろえておくことが、結果として最も負担の少ない進め方になります。

まとめ

相手が財産を隠していると感じたときは、いきなり法的な手段に飛ぶのではなく、通帳・郵便物・登記・年金記録といった手元の資料から手がかりを集め、そのうえで求釈明、弁護士会照会、調停・訴訟での調査嘱託へと段階を上げていくのが現実的な進め方です。金融機関名や支店名をどこまで絞り込めるかが、制度を使えるかどうかの分かれ目になります。

熊本では口座が複数の地元金融機関に分かれていることも多く、どこに照会をかけるかの見立てが結果に影響します。弁護士法人Si-Law(熊本・八代)では、離婚や不倫のご相談を多く扱う弁護士の視点から、お手元の資料で何が分かるか、どの手続をどの順番で使うかをご一緒に整理します。別居の前後は資料を集められる時期が限られますので、気になる段階でお早めにご相談ください。なお本記事は2026年10月時点の情報に基づく一般的な説明であり、個別の事情により適切な進め方は異なります。

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監修:弁護士法人Si-Law(熊本県弁護士会所属・熊本市/八代市) 弁護士紹介 / 2026年10月24日 公開

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