「相手が県外に引っ越してしまい、毎回その家庭裁判所まで出向くのは難しい」「熊本市から天草や人吉の支部まで何度も通えない」——離婚調停を考えるとき、裁判所までの距離が最初の壁になる方は少なくありません。家事調停の期日は、裁判所が相当と認めるときには電話会議やウェブ会議の方法で参加できる仕組みがあり、遠方に住む当事者の負担を軽くする運用が広がっています。そこで本記事では、離婚調停に遠方から参加する方法と、熊本家庭裁判所の本庁・支部での進め方を、離婚・不倫のご相談を多く扱う弁護士の視点から解説します。

離婚調停の申立て先は「相手方の住所地」が原則
離婚調停(夫婦関係調整調停)は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てるのが原則です(家事事件手続法245条1項)。別居して相手が県外に移った場合、原則どおりだとその地の家庭裁判所が申立て先になります。
もう一つの方法が、当事者の合意で家庭裁判所を決める「合意管轄」です。合意は書面(電磁的記録を含む)で行う必要があり、口頭の了解だけでは足りないとされています。実務では、双方が署名した管轄合意書を申立書に添付する形が取られます。もっとも相手方の協力が前提になるため、話し合いができない状況では使いにくい方法です。なお、支部は本庁と一体のものとして扱われるという説明がされることがあり、同じ県内の支部と本庁の間で合意管轄が認められるかは、申立て先の家庭裁判所にご確認ください。
熊本県内の家事事件は、熊本家庭裁判所の本庁(熊本市)と、玉名・山鹿・阿蘇・八代・人吉・天草の各支部が扱っています。県内であっても、天草や人吉の支部まで何度も通うとなると、移動に半日以上かかることは珍しくありません。申立て先の確認と当日の流れについては、熊本で離婚調停を申し立てるには?家庭裁判所の管轄と当日の進み方もあわせてご覧ください。
電話会議・ウェブ会議で期日に参加できる場合
家事調停の期日は、家庭裁判所が相当と認めるときに、当事者の意見を聴いたうえで電話会議やウェブ会議の方法で行うことができます(家事事件手続法258条1項が準用する54条1項)。遠方に住んでいる、仕事や子どもの事情で長時間家を離れられない、といった事情は、この「相当と認めるとき」の判断材料になります。
ただし、通信手段を使うかどうかを決めるのは裁判所です。初回の期日や調停が成立する期日には出頭を求められることがあり、希望すれば常に認められるというものではありません。利用したいときは、申立ての際、または期日が指定される前に、事情を書いて希望を伝えておくとよいでしょう。
弁護士に依頼している場合は、弁護士の事務所と裁判所をつないで期日に参加する運用が広く行われています。遠方の裁判所が申立て先になっても、当事者ご本人が毎回出向かずに手続を進められる余地があるという点は、代理人を付けるかどうかを考えるうえで押さえておきたいところです。
「調停を成立させる期日」は扱いが別になる
注意が必要なのは、離婚そのものを成立させる期日です。音声だけの電話会議の方法では離婚(離縁)についての調停を成立させることはできないとされています(家事事件手続法268条3項)。また、出頭が難しい当事者が書面で調停条項案を受諾する方法も、離婚についての調停の成立には適用されません(同法270条2項)。
一方で、映像と音声のやり取りができるウェブ会議を利用して離婚の調停を成立させることは、2025年3月1日に施行された改正によって可能になったと説明されています(2026年10月時点の情報です。施行の範囲や庁ごとの運用は異なることがあるため、最新の取扱いは熊本家庭裁判所の公式サイトや申立て先の家庭裁判所でご確認ください)。
このほか、話し合いの内容が実質的にまとまっているものの出頭が難しい場合に、家庭裁判所が「調停に代わる審判」(同法284条)をする運用もあります。もっともこれは例外的な扱いで、当事者が異議を申し立てると効力を失います。どの方法が適切かは事案によって異なります。

申立て先を近くにできないか——移送と自庁処理
管轄のない家庭裁判所に申し立てた場合、原則として管轄のある裁判所へ移送されます(家事事件手続法9条1項本文)。ただし、特に必要があると認めるときは、申し立てを受けた裁判所が自ら処理することができるとされています(同項ただし書。いわゆる自庁処理)。手続の遅滞を避けるためなどの移送も定められています(同条2項)。
そこで、配偶者の暴力から避難している、乳児を連れて長距離の移動ができない、病気で遠出が難しいといった事情がある場合には、お住まいの地域の家庭裁判所に申し立て、事情を記載した上申書を添えて自庁処理を求めるという進め方が検討されます。認めるかどうかは裁判所の判断であり、結果が保証されるものではありません。
暴力やつきまといの不安がある場合は、相手と顔を合わせないための待合室の分離や時間差での呼び出しなどを、申立ての際や期日の前に申し出ておくことが大切です。詳しくはDVで離婚を考えるときの進め方と保護命令もご参照ください。
熊本・八代で遠方の調停に臨むときの実務
弁護士法人Si-Lawは熊本市と八代市にオフィスがあり、県内の各支部や県外の家庭裁判所が申立て先となる事案のご相談も承っています。申立書や事情説明書の作成、裁判所への希望の伝え方、期日での主張の整理は、距離の問題とあわせて早い段階で方針を立てておくと負担が減ります。ご相談を検討される方は弁護士紹介もご覧ください。
費用と書類についても確認しておきましょう。離婚調停の申立手数料は収入印紙1,200円で全国一律です(2026年10月時点)。これとは別に連絡用の郵便切手の予納が必要ですが、必要な額や内訳は家庭裁判所ごとに異なるため、申立て先の家庭裁判所にご確認ください。
- 申立書とその写し、戸籍謄本(全部事項証明書)
- 事情説明書、子についての事情説明書、進行に関する照会回答書
- 年金分割を求める場合は「年金分割のための情報通知書」
- 合意管轄を使う場合は双方が署名した管轄合意書、自庁処理を求める場合は上申書
なお、別居中の生活費については、離婚調停とは別に婚姻費用分担請求調停の申立てが必要です。調停が不成立になった後の流れや費用は、離婚調停が不成立で審判に移ると費用はいくら?で解説しています。また、話し合いで解決する協議離婚との違いを整理したい方は協議離婚と調停離婚の違いは?をご覧ください。
まとめ
離婚調停の申立て先は相手方の住所地が原則ですが、書面による合意管轄、自庁処理を求める上申、電話会議・ウェブ会議の方法での参加といった選択肢があり、遠方に住んでいることが手続をあきらめる理由になるとは限りません。他方で、離婚を成立させる期日の扱いには法律上の制約があり、通信手段を使えるかどうかは裁判所の判断によります。
どの方法がご自身の事情に合うのかは、相手の居住地、お子さまの状況、暴力の有無などによって変わります。熊本・八代で離婚調停をお考えの方は、申立て先を決める前の段階で一度弁護士にご相談ください。
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※AIによる一般的な情報提供です。個別の法的判断は弁護士にご相談ください。
監修:弁護士法人Si-Law(熊本県弁護士会所属・熊本市/八代市) 弁護士紹介 / 2026年10月20日 公開
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