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2026.10.17コラム
子どもを連れて行かれたら|監護者指定・子の引渡しの手続きと熊本家庭裁判所での流れを弁護士が解説

ある日帰宅したら、配偶者が子どもを連れて家を出ていた。実家に電話しても会わせてもらえない――離婚のご相談のなかでも、もっとも急を要するのがこの場面です。子どもと離れた側は「今すぐ取り戻したい」と考え、連れて出た側は「身を守るために出た」と考えており、双方の言い分が正面からぶつかります。そこで本記事では、子どもを連れて行かれたときに使える監護者指定と子の引渡しの手続き、2026年4月に施行された改正民法での「子を連れての別居」の考え方、そして熊本家庭裁判所に申し立てる場合の実務を、熊本・八代で離婚のご相談を多く扱う弁護士の視点から整理します。

子どもの引渡しの相談のイラスト

子どもを連れて行かれたとき、まずすることと避けたいこと

最初にお伝えしたいのは、力で取り戻そうとしないことです。保育園や学校の前で子どもを連れ帰る、相手の実家に上がり込むといった行動は、その後の家庭裁判所の判断で「子どもの生活を乱す行動」と受け止められることがあり、かえって不利に働くおそれがあります。緊急性が高い場面ほど、手続によって動くほうが結果的に早いことが少なくありません。

そのうえで、次のような記録を早めに手元に集めておくことが大切です。いずれも、別居前にどちらが子どもの世話をしていたかを示す材料になります。

  • 連れて行かれた日時と、そのときの状況のメモ(できるだけ具体的に)
  • 保育園・学校の連絡帳、送迎の記録、行事の写真、通院の記録
  • やりとりが残るLINE・メールの画面(消さずに保存する)
  • 相手方の居場所や子どもの通園・通学先に関する情報

相手方に暴力やつきまといの不安がある場合は、別の制度も併せて検討します。詳しくはDVで離婚したいときの進め方と保護命令もご覧ください。

2026年4月施行の改正民法で「子を連れての別居」はどう扱われるか

2026年4月1日に施行された改正民法により、親権の行使方法についてのルールが整理されました。報道などで広く知られたのは離婚後の共同親権ですが、別居の場面にも関わる改正が含まれています。

改正民法824条の2では、父母が共同して親権を行使できない場合に一方だけで行使してよいのは、「日常の行為」にあたるとき、または「子の利益のため急迫の事情があるとき」に限られると整理されたと説明されています。日常の食事や軽い病気の通院などは「日常の行為」にあたる一方、子どもの生活の拠点そのものを移すことは「日常の行為」には含まれないという解説が有力です。他方で、子どもへの暴力や虐待、子どもの面前での暴力といった事情があるケースは「急迫の事情」にあたりうると説明されています。

また、改正民法では監護者の権限が条文上明確にされ(民法824条の3)、監護者と定められた親は子どもの監護や教育、居所の決定などを単独で行えるものとされています。これは、これまで実務上の呼び名にとどまっていた「監護者」の位置づけを明文化したものと説明されています。

もっとも、改正法の施行からまだ日が浅く、どのような事情が「急迫の事情」と評価されるかについて裁判所の判断が積み重なっている段階です。ここに挙げたのは2026年10月時点の一般的な説明であり、個別の事案での結論を示すものではありません。条文の最新の内容は法務省や e-Gov 法令検索の公式情報をご確認ください。なお、共同親権そのものの考え方は離婚の親権はどっちが有利?母親有利の理由と父親が取る条件|共同親権も弁護士が解説で詳しく扱っています。

監護者指定・子の引渡しの手続きと、審判前の保全処分

話し合いで決まらない場合、家庭裁判所に申し立てる手続は主に次の3つを組み合わせます。

  • 子の監護者の指定…離婚が成立するまでの間、どちらが子どもを育てるかを決めてもらう手続です。
  • 子の引渡し…子どもを相手方から引き渡すよう求める手続です。引渡しだけを求めるのではなく、監護者の指定と併せて申し立てるのが原則とされています。
  • 審判前の保全処分…結論が出るまで待てない事情があるときに、先に暫定的な判断を求める手続です。

監護者指定と子の引渡しは、話し合いの手続である調停と、裁判官が判断する審判のどちらでも申し立てられます。急いで結論が必要な場面では審判を選び、併せて保全処分を申し立てるという進め方が実務では多く見られます。ただし保全処分は、子どもの身の安全に差し迫った危険があるなど、緊急性と必要性を具体的に示せる場合に限られるとされており、簡単に認められるものではありません。緊急性がはっきりしない事案では、保全処分の判断を本案と併せて行うと案内されることもあります。

監護者指定・子の引渡しの手続きの流れ
図:監護者指定・子の引渡しの手続きの流れ

期間の見通しは事案によって大きく異なります。申立てから審判まで半年前後かかることが多いと説明される一方、保全処分が認められた場合はより短い期間で暫定的な結論が出ることもあるとされています。これらは実務で見られる一般的な目安であり、公的な統計に基づく確定値ではありません(2026年10月時点)。審判に不服がある場合の即時抗告は、告知を受けた日から2週間以内に行う必要があります。

相手方が審判に従わないときは、強制執行を検討します。もっとも、子どもの引渡しの強制執行は財産の差押えとは性質が異なり、まず間接強制(従わない場合に金銭の支払を命じる方法)を経ることが原則とされ、執行の申立てにも期間の制限があります。どの方法を採るかは弁護士とご相談のうえ、慎重に選ぶ必要があります。

家庭裁判所調査官の調査と、監護者の判断で重視される事情

この手続の山場は、家庭裁判所調査官の調査です。調査官は心理学や教育学などの知見をもつ裁判所の職員で、おおむね次のような調査を行います。

  • 父母それぞれとの面接(別の日に、別々に行われるのが通例です)
  • 現在子どもを育てている側の家庭訪問と、生活環境の確認
  • 子ども本人との面接(年齢や発達の程度に応じて行われます)
  • 必要に応じた保育園・学校への照会

調査結果は調査報告書にまとめられ、裁判官はこれを重要な資料として判断します。裁判官が報告書の意見に拘束されるわけではありませんが、実務上の影響は大きいとされています。

監護者を決めるにあたって重視されやすいのは、これまで誰が実際に子どもの世話をしてきたか(監護の継続性)、現在の生活が安定しているか、子ども自身の意向、きょうだいを分けない配慮、相手方との親子交流にどのような姿勢をとるかといった事情です。年齢によって重みづけも変わり、小学校高学年以上になると子ども本人の意向がより尊重される傾向があるとされています。事案によって適切な主張の組み立ては異なりますので、一般論だけで見通しを判断することは避けたほうがよいでしょう。

なお、子どもと会えない状態が続く場合は、引渡しとは別に親子交流(面会交流)の調停を申し立てる方法もあります。こちらは親子交流(面会交流)を拒否されたら?決め方と履行勧告・間接強制までの流れで解説しています。

熊本家庭裁判所に申し立てる場合の窓口・費用・必要書類

申立て先は、調停は相手方の住所地、審判は子どもの住所地を管轄する家庭裁判所が原則です。子どもを連れて行かれた事案では、相手方が子どもを連れて移った先の裁判所になることが多く、たとえば相手方が子どもを連れて八代市の実家に戻った場合は、熊本家庭裁判所八代支部が窓口になるのが通常です。熊本県内では熊本市中央区の本庁のほか、玉名・山鹿・阿蘇・八代・人吉・天草に支部が置かれています。双方で合意して管轄合意書を提出すれば、別の家庭裁判所で進めることもできるとされています。

費用と書類については、2026年10月時点で一般に次のとおり案内されています。

  • 収入印紙…子ども1人につき1,200円(全国一律の実費です)
  • 連絡用の郵便切手…庁によって必要な内訳が異なりますので、申立て先の家庭裁判所にご確認ください
  • 申立書…裁判所用・相手方送付用・申立人の控えの3通を用意します(申立書の写しは法律上、相手方に送付されます)
  • 子どもの戸籍謄本(全部事項証明書)…発行から3か月以内のもの
  • 子の監護に関する陳述書…手続の進行に応じて提出を求められることがあります

住所を相手方に知られたくない事情があるときは、申立書に住所を書かずに、取扱いを裁判所に相談することができます。暴力やつきまといの不安がある場合は、待合室を分けてもらうなどの配慮を、申立ての際や期日の前に申し出ておくことが大切です。管轄や手続の詳細は変更されることがありますので、最新の情報は熊本家庭裁判所の公式サイトでご確認ください。離婚調停そのものの進み方は熊本で離婚調停を申し立てるには?家庭裁判所の管轄と当日の進み方でも解説しています。

まとめ

子どもを連れて行かれたときは、力で取り戻そうとせず、監護者指定と子の引渡しの申立て(必要に応じて審判前の保全処分)という手続で動くことが原則です。2026年4月施行の改正民法により、別居の場面での親権行使のルールや監護者の権限が整理され、「急迫の事情」があったかどうかが一つの視点になると説明されています。判断の中心となるのは家庭裁判所調査官の調査であり、これまでどちらが子どもの世話をしてきたかを示す資料をどれだけ早く整えられるかが鍵になります。

この手続は時間の経過が結論に影響しやすい分野です。熊本家庭裁判所のどの庁に申し立てるのか、保全処分を併せるべきか、どの資料から集めるのかは事案ごとに異なりますので、できるだけ早い段階で弁護士にご相談ください。

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監修:弁護士法人Si-Law(熊本県弁護士会所属・熊本市/八代市) 弁護士紹介 / 2026年10月17日 公開

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案の結論を保証するものではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。

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