離婚の話し合いでは財産分与や養育費に目が向きがちですが、「年金はどうなるのか」というご相談も少なくありません。とくに婚姻期間が長いご夫婦では、離婚後の生活設計に大きく関わってきます。離婚時の年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2つの制度があり、令和8年4月1日からは請求期限が2年から5年に延長されました。そこで本記事では、離婚時の年金分割の仕組みと手続きの進め方を、離婚・不倫のご相談を多く扱う弁護士の視点から整理します。

離婚時の年金分割とは|分けられるのは「年金額」ではなく保険料の納付記録
年金分割は、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録(標準報酬)を夫婦の間で分け合う制度です。相手が受け取る年金そのものを半分もらう制度ではなく、将来の年金額を計算するもとになる記録を分けるもの、とお考えいただくと分かりやすいと思います。
対象になるのは厚生年金の記録に限られるのが原則で、国民年金(基礎年金)の部分や、iDeCo・企業型確定拠出年金といった私的な年金は年金分割の対象外とされています。また、分割を受けても、ご自身が年金を受け取れるのは原則として65歳からで、受給資格期間(原則10年)を満たしている必要があります。分割を受けたからといって、すぐに年金が入ってくるわけではない点にご注意ください。
- 分けるのは「年金額」ではなく厚生年金の納付記録
- 国民年金や私的年金は対象外とされているのが原則
- 離婚しただけでは分割されず、期限内に請求の手続きが必要
合意分割と3号分割|2つの制度の仕組み
合意分割は、婚姻期間中の厚生年金の記録について、夫婦の合意(まとまらない場合は家庭裁判所の調停や審判)で按分割合を決めて請求する制度です。按分割合の上限は2分の1とされており、それを超える割合を定めることはできません。
3号分割は、平成20年4月1日以後の、国民年金第3号被保険者であった期間についての相手方の厚生年金記録を、2分の1ずつ分割する制度です。日本年金機構の説明では、3号分割のみを請求する場合には当事者の合意は不要で、第3号被保険者であった方からの手続きによって分割が認められるとされています。
婚姻期間が平成20年4月より前から続いている場合は、その前の期間については合意分割、以後の第3号被保険者期間については3号分割、というように両方の制度が関係することもあります。どちらの制度がどの期間に及ぶかは、婚姻期間やその間の働き方によって異なりますので、まずはご自身の記録を確認することが出発点になります。
令和8年4月1日から請求期限が2年から5年に|離婚した時期で扱いが変わります
年金分割の請求には期限があります。日本年金機構の案内によれば、令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)により、令和8年4月1日以後に離婚等をした場合の請求期限は、離婚等をした日の翌日から起算して原則5年以内に延長されました。同日より前に離婚等をした場合は、従来どおり原則2年以内です(2026年9月時点の情報です)。
この改正は、民法上の財産分与を請求できる期間が2年から5年に伸長されたことに合わせたものと説明されています。つまり、いつ離婚したかによって残された期間が変わるということです。期限を過ぎると請求できなくなるのが原則ですので、離婚後に「年金のことを決めていなかった」と気づかれた方は、まずご自身の離婚日を確認してください。制度は改正されることがありますので、最新の取扱いは日本年金機構の公式サイトでご確認ください。
年金分割の手続きの進め方|情報通知書から標準報酬改定請求まで
実務では、まず年金事務所に「年金分割のための情報提供請求書」を提出し、婚姻期間や分割の対象となる記録が記載された「年金分割のための情報通知書」を取得するところから始めるのが一般的です。請求には、基礎年金番号やマイナンバーが分かる書類、婚姻期間が分かる戸籍謄本などが必要とされています。交付まで一定の期間がかかることがありますので、余裕をもって請求されることをおすすめします。
合意分割で按分割合がまとまったら、年金事務所に標準報酬改定請求(いわゆる分割の請求)を行います。夫婦だけで合意する場合は、公正証書や公証人の認証を受けた私署証書など、定められた形式の書面が求められるのが原則です。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の調停や審判で按分割合を定めることになります。3号分割のみを請求する場合は、離婚後にご自身で年金事務所へ請求する形になります。離婚そのものの進め方については協議離婚・調停離婚・裁判離婚の違いもあわせてご覧ください。
熊本で年金分割を進めるときに気をつけたいこと
熊本県内にお住まいの方の場合、情報通知書の請求や標準報酬改定請求は、お近くの年金事務所(熊本東・熊本西・八代など)や街角の年金相談センターが窓口になります。窓口の所在や必要書類は変わることがありますので、お出かけの前に日本年金機構の公式サイトや電話でご確認ください(2026年9月時点)。
話し合いがまとまらず家庭裁判所の手続きを使う場合は、熊本家庭裁判所の本庁または支部(玉名・山鹿・阿蘇・八代・人吉・天草)が窓口になるのが原則です。離婚調停を申し立てる際に、年金分割の按分割合についてもあわせて申立てをしておくと、期日を重ねる回数を抑えられる場合があります。もっとも、どのように申し立てるのが適切かは事案によって異なります。調停の進み方は熊本で離婚調停を申し立てるには?家庭裁判所の管轄と当日の進み方もご参照ください。
年金分割は、財産分与や養育費とあわせて離婚の条件を組み立てていくことが多い項目です。「年金分割で2分の1を確保する代わりに他の条件で譲る」といった調整もあり得ますが、どこで折り合うのが適切かは、収入・婚姻期間・お子さんの状況によって変わります。判断に迷われたときは、お一人で抱えずに弁護士にご相談ください。
まとめ
離婚時の年金分割は、婚姻期間中の厚生年金の納付記録を分ける制度で、合意分割と3号分割の2種類があります。離婚しただけでは自動的に分割されず、請求の手続きが必要です。令和8年4月1日以後の離婚等については請求期限が原則5年に延長されましたが、それより前の離婚では原則2年のままですので、離婚の時期の確認が第一歩になります。
弁護士法人Si-Law(熊本・八代)では、年金分割を財産分与や養育費と一体で整理し、離婚後の生活を見通したうえでの条件づくりをお手伝いしています。具体的な事情をうかがったうえで、取り得る選択肢をご説明します。
監修:弁護士法人Si-Law(熊本県弁護士会所属・熊本市/八代市) 弁護士紹介 / 2026年9月8日 公開
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案の結論を保証するものではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。