「協議離婚で養育費や財産分与を決めたけれど、口約束のままで大丈夫だろうか」「公正証書を作った方がいいと聞いたが、何をどう準備すればいいのか分からない」。熊本市や八代市でのご相談でも、話し合いで離婚条件がまとまったあとに多い質問です。離婚の公正証書とは、夫婦が合意した離婚条件を公証人が公文書にしたもので、所定の条項を入れておけば、金銭の支払いが滞ったときに裁判を経ずに差押えなどの強制執行を申し立てられる点に大きな意味があります。そこで本記事では、離婚の公正証書の作り方と必要書類、書いておきたい条項、そして2026年4月の民法改正後もなお作成を検討すべき場面を、離婚・不倫のご相談を多く扱う弁護士の視点から解説します(2026年9月時点の情報です)。

離婚の公正証書とは|離婚協議書との違い
夫婦だけで作る離婚協議書も、合意の証拠としては有効です。ただし、相手が約束どおり支払わない場合、協議書だけでは原則として直ちに差押えはできず、調停や訴訟で改めて権利を確定させる手間がかかります。
これに対し、公正証書に「支払いを怠ったときは直ちに強制執行に服する」旨の強制執行認諾文言を入れておくと、その公正証書が債務名義となり、給与や預貯金の差押えを申し立てられるようになります。もっとも、強制執行できるのは養育費・慰謝料・財産分与などの金銭の支払いに限られ、親子交流(面会交流)の実施などは対象外です。また、相手に差し押さえる財産がなければ回収は難しいため、万能ではない点にも注意が必要です。
作り方の流れと期間の目安
公正証書は、夫婦の合意があって初めて作成できます。一方だけが公証役場に行っても作ることはできません。一般的な流れは次のとおりです。

- 条件を固める:親権、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割などを話し合います。協議離婚の進め方は協議離婚・調停離婚・裁判離婚の違いもご覧ください。
- 公証役場に申し込む:公正証書は住所地にかかわらず全国どこの公証役場でも作成できます。合意内容のメモや案文、必要書類を事前に送り、公証人が原案を作ります。原案の完成までは、公証役場や内容によって異なりますが、実務上は1〜2週間程度を一つの目安とすることが多いようです。
- 署名して受け取る:原則として夫婦双方が公証役場に出向いて内容を確認し、署名します。2025年10月1日施行の公証人法等の改正(公正証書のデジタル化)により、公証人が相当と認める場合にはウェブ会議を利用したリモート方式での作成も可能になりました。利用の可否や機材の条件は申込先の公証役場にご確認ください。
必要書類と手数料の考え方
公証役場によって求められる資料は異なりますが、一般的には次のようなものを準備します。
- 夫婦双方の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 戸籍謄本(離婚前であれば婚姻中の戸籍)
- 財産分与をする場合は、不動産の登記事項証明書や固定資産評価証明書、預貯金・保険の資料など
- 年金分割をする場合は、年金手帳や基礎年金番号が分かる資料と「年金分割のための情報通知書」
手数料は公証人手数料令で定められており、公正証書に記載する金額(養育費・財産分与・慰謝料の合計など)に応じて決まります。手数料の額は2025年10月に改定されているため、古い情報をうのみにせず、作成前に申込先の公証役場で見積もりを確認しておくと安心です。
公正証書に書いておきたい主な条項
後で「言った・言わない」にならないよう、金額・期間・方法を特定して書くことが大切です。
- 離婚の合意と親権者:子どもごとに親権者を記載します。
- 養育費:月額、支払日、振込先、いつまで支払うか(「満20歳に達する日の属する月まで」など)、進学時の扱い。相場の考え方は養育費の相場と決め方で解説しています。
- 親子交流:頻度や方法。強制執行の対象ではありませんが、取り決めを具体的にしておくと、その後の調停などで役立つことがあります(親子交流を拒否されたら)。
- 財産分与・慰謝料:金額、一括か分割か、分割の場合に支払いを怠ったときの残額一括請求(期限の利益喪失)。
- 年金分割:按分割合など。手続の詳細は離婚時の年金分割をご参照ください。
- 清算条項・強制執行認諾文言:これ以外に債権債務がないことの確認と、強制執行に服する旨の文言です。
2026年4月の民法改正で公正証書は不要になった?
改正民法(令和6年法律第33号、2026年4月1日施行)により、養育費の請求権に先取特権が認められました。これにより、公正証書がなくても、父母の合意を示す文書などがあれば、法務省令で定める額(子ども1人あたり月額8万円。2026年9月時点)の範囲で差押えを申し立てられる道が開かれています。また、取り決めがない場合に一定額を請求できる法定養育費(同じく法務省令で子ども1人あたり月額2万円)も新設されました。
それでも、次のような場面では公正証書を作る意味は残ります。
- 養育費が上記の上限額を超える場合(超える部分は先取特権の対象外)
- 慰謝料や財産分与を分割で受け取る場合(これらは先取特権の対象ではありません)
- 合意文書の書き方に不備があり、先取特権の要件を満たすか争いになるおそれがある場合
どの制度が使えるかは離婚時期や合意の内容によって異なりますので、具体的には弁護士にご確認ください。
熊本で公正証書を作るときの実務上の注意点
熊本県内でも、熊本市や八代市など各地に公証役場があります。ただ、公証人は中立の立場で合意を文書にする役割であり、どちらか一方に有利・不利といった助言や、条件が妥当かどうかの判断はしません。養育費の額が相場と比べて低すぎないか、住宅ローンが残る自宅の分け方に無理がないかといった点は、公証役場に行く前に検討しておく必要があります。
また、相手が公正証書の作成に応じない、条件で折り合わないという場合は、家庭裁判所の調停を利用する方法があります。熊本での申立ての流れは熊本で離婚調停を申し立てるにはで解説しています。調停で成立した調停調書にも、公正証書と同様に強制執行の効力が認められます。条件交渉を弁護士に任せたい場合は、弁護士紹介や費用のページもご覧ください。
まとめ
離婚の公正証書は、養育費や慰謝料などの支払いが止まったときに備える有力な手段です。作成には夫婦の合意が前提で、条件を固め、公証役場に資料を送り、署名して受け取るという流れで進みます。2026年4月から養育費には先取特権が認められましたが、上限額を超える養育費や分割払いの慰謝料・財産分与などでは、公正証書を作る意味は今も小さくありません。どの条項をどう書くかで後の回収のしやすさが変わりますので、署名の前に一度、弁護士に内容を確認してもらうことをおすすめします。事案によって適切な対応は異なります。
監修:弁護士法人Si-Law(熊本県弁護士会所属・熊本市/八代市) 弁護士紹介 / 2026年9月15日 公開
離婚・不倫のご相談は弁護士法人Si-Lawへ
弁護士法人Si-Law(熊本・八代)では、離婚や不倫に関するご相談を承っております。財産分与・慰謝料・親権・養育費など、お金と子どもの問題について、あなたにとって最善の解決を一緒に考えます。初回相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。
▶ 無料相談のご予約はこちら
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案の結論を保証するものではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。