離婚調停が不成立で終わったとき、「このあとは裁判になるのだろうか」「訴えを起こすなら、どこに、どんな書類を出すのか」と不安になる方は少なくありません。調停が終わったからといって自動的に裁判が始まるわけではなく、あらためて手続をとる必要があります。そこで本記事では、離婚裁判(離婚訴訟)がどのような手続なのか、訴えを起こす裁判所、訴状の提出から判決までに進む段階、審理にかかる期間と費用の目安までを、熊本・八代で離婚のご相談を多く扱う弁護士の視点から整理して解説します。

離婚裁判(離婚訴訟)とはどのような手続か
離婚裁判とは、夫婦の話し合いや調停では離婚の合意ができない場合に、家庭裁判所に訴えを起こし、最終的に裁判所の判断(判決)によって離婚の可否を決めてもらう手続です。人事訴訟と呼ばれる類型にあたり、離婚そのものだけでなく、親権者の指定、養育費、財産分与、年金分割といった付随する事項についても、あわせて判断を求めることができるのが原則です。
調停との大きな違いは、当事者が合意しなくても結論が出るという点にあります。調停はあくまで話し合いの場であり、双方が納得しなければ成立しません。これに対し訴訟では、提出された主張と証拠をもとに裁判所が判断を示します。もっとも、判断の材料になるのは主張と証拠ですので、感情面の事情をそのまま述べるだけでは足りず、書面と資料で組み立てていく作業が中心になります。協議・調停・裁判それぞれの位置づけは、協議離婚・調停離婚・裁判離婚の違いの記事でも整理しています。
訴えを起こす前に確認しておきたい2つの前提
離婚訴訟には、二つの前提があります。第一が調停前置です。離婚は原則としてまず家庭裁判所の調停を経る必要があり、調停を申し立てないままいきなり訴えを起こすことは、原則として認められていません。そして注意が必要なのは、調停が不成立になっても、その事件が自動的に訴訟へ移るわけではないという点です。訴訟を望む場合は、あらためて訴状を提出して訴えを起こす必要があります。
第二が、法律上の離婚原因(法定離婚事由)です。民法は、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、強度の精神病、その他婚姻を継続し難い重大な事由といった事情を離婚原因として定めています。実務では最後の「婚姻を継続し難い重大な事由」が問題になる場面が多く、別居期間、暴力やモラハラの有無、生活の実態などを総合して判断されるのが一般的です。どの事情がどこまで評価されるかは事案によって大きく異なりますので、見通しは個別に検討することになります。
熊本ではどこの裁判所に訴えを起こすのか
離婚訴訟は、地方裁判所ではなく家庭裁判所が扱います。この点は「裁判=地裁」というイメージをお持ちの方が誤解しやすいところです。訴えを起こす裁判所は、原則として夫婦のいずれかの住所地を管轄する家庭裁判所とされており、調停を行った家庭裁判所に事件を扱ってもらえる場合もあります。
熊本県内には、熊本家庭裁判所の本庁のほか、玉名・山鹿・阿蘇・八代・人吉・天草の各支部が置かれています。たとえば八代市やその周辺にお住まいであれば八代支部が身近な庁になりますが、どの庁が担当になるかは当事者の住所や事件の経緯によって変わります。支部ごとの取扱いや期日の運用にも違いがありますので、申立て先は事前の確認が欠かせません。調停段階の管轄や当日の様子については、熊本で離婚調停を申し立てるには?もあわせてご覧ください。なお、本記事は2026年9月時点の情報です。最新の管轄や庁の所在地は、熊本家庭裁判所の公式サイトでご確認ください。
訴状の提出から判決までに進む段階
訴訟は、おおむね次のような段階を踏んで進みます。まず、離婚を求める側(原告)が訴状と証拠書類を家庭裁判所に提出します。訴状が受け付けられると相手方(被告)に送達され、被告は答弁書で認否と反論を示します。その後、第1回の口頭弁論が開かれ、以降はおおむね月1回程度のペースで期日が重ねられ、双方が主張書面と書証を出し合って争点を絞り込んでいきます。
争点整理がひととおり終わると、当事者本人が法廷で質問に答える本人尋問が行われることがあります。ここでは、それまでに提出した書面との食い違いが生じないことが重要になりますので、事前の準備が結果を左右しやすい場面です。審理の途中や尋問後には、裁判所から和解の話が持ちかけられることもあります。和解に応じるかどうかは当事者の判断に委ねられており、応じなければ審理はそのまま続き、最終的に判決が言い渡されます。
審理にかかる期間と費用の目安
期間について、司法統計(人事訴訟関係)で示されている全国平均では、第一審の平均審理期間はおおむね14か月前後、双方が出頭して判決に至った事件に限るとおおむね19か月前後とされています。これは2026年9月時点で公表されている統計に基づく全国平均であり、争点の数や証拠の量によって個別の事件では大きく異なります。
裁判所に納める費用のうち、収入印紙は全国一律で、離婚のみを求める場合は1万3000円です。慰謝料や財産分与などを併せて請求する場合は、請求額に応じて加算されます。このほかに書類の郵送に使う予納郵便切手が必要ですが、必要な額や組合せは庁によって異なりますので、申立て先の家庭裁判所にご確認ください。
弁護士に依頼する場合の費用は、着手金と報酬金を合わせて数十万円台から百万円前後になることが多いといわれますが、これは実務で見られる一般的な目安であり、公的な統計に基づく確定値ではありません(2026年9月時点)。事務所や事案によって設定は異なりますので、依頼前に見積りを確認しておくと安心です。当法人の費用の考え方については費用のご案内をご覧ください。
和解で終わる場合と、判決が確定したあとの手続
離婚訴訟は、必ず判決で終わるわけではありません。審理の途中で条件が折り合えば和解離婚として終了することもあり、実務上はこの形で解決する事件も相当数あります。和解では、離婚の可否だけでなく、養育費や財産分与の支払方法まで含めて具体的に取り決められる点が実際的な利点になります。
判決が言い渡された場合、判決書の送達を受けた日から2週間以内に控訴がなければ、判決は確定します。離婚を認める判決が確定したときは、確定の日から10日以内に、判決書の謄本と確定証明書を添えて市区町村役場に離婚届を提出する必要があります。これは離婚の成立を報告するための届出で、届出によって離婚が成立するわけではありませんが、期限がありますので忘れずに行ってください。財産分与や年金分割など離婚後に手続が必要になるものもあり、年金分割については離婚時の年金分割の記事で解説しています。
離婚調停が不成立になったあとの選択肢|すぐ裁判にしない場合も
離婚調停が不成立になったとき、道は裁判だけではありません。熊本や八代のご相談でも、「調停がだめだったので、もう裁判しかない」と思い込んでいる方が少なくありません。ここでは、調停後の主な選択肢を整理します。
調停不成立後に考えられる動き方
- 訴えを起こす:本文で説明したとおり、あらためて訴状を提出して離婚訴訟を始めます。
- しばらく様子を見る:別居の期間を重ねてから、改めて調停や訴訟を検討する方もいます。別居期間は離婚原因の判断で重視されることがあります。
- 再度の調停や協議:状況が変わったとき、再び調停を申し立てたり、弁護士を通じて話し合いを再開したりする場合もあります。
調停に代わる審判という制度
離婚調停では、ごくまれに、合意まであと一歩のときに、家庭裁判所が調停に代わる審判をすることがあります。この審判に対しては、一定の期間内に異議を申し立てると効力を失う仕組みです。この制度が使われるかどうかは事案によって異なり、運用の頻度も高くはないため、期待しすぎないほうがよいでしょう。
離婚調停の費用との違い
離婚調停の申立手数料は、収入印紙1,200円が基本で、別に郵便切手代と戸籍謄本の取得費用がかかります。調停段階では実費は数千円程度のことが多いものの、子の親権などを併せて申し立てると加算される場合があるため、申立先の家庭裁判所で確認してください。裁判になると印紙代の額が上がり、手続も長くなるため、費用の総額も大きくなりがちです。
離婚裁判の費用は誰が負担する?弁護士費用の内訳と慰謝料の請求
離婚裁判の費用で気になるのは、「誰が払うのか」「慰謝料も一緒に請求できるのか」という点でしょう。実際の相談でも、費用面の見通しを先に知りたいという声はとても多いです。
裁判所に納める費用と弁護士費用の違い
- 訴訟費用(印紙代・切手代など):判決で、原則として敗訴した側の負担とされるのが通常です。ただし和解の場合は、各自が負担するなどの取り決めをすることが多くなります。
- 弁護士費用:依頼した側が自分で支払うのが原則です。訴訟費用には含まれず、相手に請求できる場面は限られます。
弁護士費用は、着手金と報酬金に分かれるのが一般的です。金額は事務所や事案の難しさによって大きく異なりますので、見積りの内訳を必ず確認してください。
離婚裁判で慰謝料を請求する場合
配偶者の不貞行為やDV・モラハラなどがあったときは、離婚の訴えとあわせて、慰謝料を請求することができます。これを附帯請求といいます。慰謝料の額は、婚姻期間、不貞の期間や回数、精神的苦痛の程度などを総合して判断されるため、一律の相場があるわけではありません。
なお、不倫相手への慰謝料請求は、配偶者に対する離婚訴訟とは別の手続になるのが通常です。請求先や進め方によって有利不利が変わるため、慰謝料の請求は早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
離婚裁判の期間が長引く原因と、できるだけ短くするためのポイント
離婚裁判の期間は、全国平均の数字だけでは見通しが立てにくいものです。長引きやすい事情と、手続を滞らせないための準備を押さえておきましょう。
期間が長くなりやすいケース
- 親権や面会交流の争いが大きく、調査官による調査が行われる場合
- 財産分与の対象となる財産が多く、評価額で争いがある場合
- 不貞や暴力の有無そのものが争点になり、尋問が必要になる場合
- 離婚原因を作った側(有責配偶者)が離婚を求める場合。この場合、別居期間や未成熟の子の有無などが問題になり、判断が慎重になる傾向があります。
手続をスムーズに進める準備
証拠は、訴訟を考え始めた時点から整理しておくと、書面の作成が早くなります。通帳の写しや源泉徴収票など、財産に関する資料もそろえておくとよいでしょう。
書面の提出や期日の調整が遅れると、そのぶん審理も長引きます。弁護士に依頼している場合は、連絡を密にとり、提出資料の締切を守ることが大切です。個別の事案で期間がどの程度かかるかは、弁護士に確認してください。
まとめ
離婚裁判は、調停が不成立に終わったあとに、あらためて家庭裁判所へ訴えを起こすことで始まります。熊本県内では本庁と6つの支部が窓口となり、訴状の提出から判決まで1年を超えることも珍しくありません。どの事情を離婚原因として主張し、どの資料で裏づけるかによって進み方は変わりますので、早い段階で見通しを立てておくことが負担の軽減につながります。訴訟まで見据えた対応にお悩みのときは、弁護士にご相談ください。
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※AIによる一般的な情報提供です。個別の法的判断は弁護士にご相談ください。
監修:弁護士法人Si-Law(熊本県弁護士会所属・熊本市/八代市) 弁護士紹介 / 2026年9月9日 公開
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案の結論を保証するものではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。