「養育費はいくらが相場ですか」「相手が払わなくなったらどうすればよいですか」。熊本市や八代市で離婚のご相談をお受けしていると、この二つは必ずといってよいほど出てきます。結論として、金額は家庭裁判所が公開している算定表を目安に、父母双方の収入と子どもの人数・年齢から幅で示されるのが一般的です。そしてもう一つ、金額以上に見落とされやすいのが「どの形式で取り決めるか」です。せっかく話がまとまっても、書面の形が整っていないと、支払いが止まったときにすぐ動けません。離婚・不倫のご相談を多く扱う弁護士の視点から、養育費の決まり方と不払いへの備えを整理します。

養育費とは(婚姻費用との違い)
養育費とは、子どもを日常的に監護していない親が分担する、子の監護や教育に必要な費用です。親としての扶養義務に基づくものであり、子どもの側から見れば権利という性質を持つものと理解されています。そのため「面会させないなら払わない」といった取引の材料にはならないのが原則です。
混同されやすいのが婚姻費用です。婚姻費用は離婚が成立するまでの間、配偶者の生活費を含む夫婦の生活費全体を分担するもので、離婚後に子どものために支払われる養育費とは水準が変わることが多くあります。別居中に受け取っていた額がそのまま続くわけではない点に注意が必要です。親権の決まり方については親権はどうやって決まる?もあわせてご覧ください。
金額はどう決まるのか
実務では、家庭裁判所が公表している養育費・婚姻費用算定表を出発点とすることが一般的です。支払う側と受け取る側の収入、子どもの人数、子どもの年齢(0〜14歳か15歳以上か)を当てはめると、月額が一定の幅をもって示されます。算定表は裁判所の公式サイトで公開されていますので、まずご自身のケースに当てはめると話し合いの土台がつかめます。
もっとも、算定表は標準的な家庭を想定した目安であり、裁判例や実務で見られる一般的な指標であって公的な統計に基づく確定値ではありません(2026年9月時点)。私立学校の学費、塾や習い事の費用、継続的な治療が必要な場合の医療費などは当然には織り込まれておらず、別途分担を話し合う余地があります。逆に、住宅ローンの負担や他に扶養すべき子がいる事情が考慮されることもあります。最終的な金額は個別の事情により異なります。
いつまで払うのか
「成人するまで」という書き方は、成年年齢が18歳に引き下げられたため、後から「18歳までのはずだ」「20歳までの約束だった」と争いになりやすい表現です。「満20歳に達する月まで」など、年齢と月をはっきり書くのが原則です。
大学進学を見込む場合はさらに注意が必要です。「大学卒業まで」とだけ書くと、進学しなかった場合や留年した場合の扱いが曖昧になります。「22歳に達した後の最初の3月まで」といった書き方や、進学した場合の入学金・学費の分担を別に定める方法などが考えられますが、どの表現が適切かはご家庭の状況により異なります。
取り決めの形式が決定的になる
ご相談の現場で最も多い失敗は、金額の交渉に力を注いだ結果、口約束や当事者だけで作った合意書で終わってしまうことです。この形では、支払いが止まっても直ちに給与や預金を差し押さえることは原則としてできず、改めて裁判所の手続が必要になります。そこで、次のいずれかの形にしておくことが重視されます。
- 強制執行認諾文言のある公正証書(公証役場で作成し、協議離婚でも利用できます)
- 調停調書(家庭裁判所の調停で合意した内容を記載したもの)
- 審判書・判決(裁判所が判断を示したもの)
いずれも不払いの際に強制執行の手がかりとなる書面です。子どもが自立するまでの長い約束だからこそ、形式を整える意味があります。手続の流れは熊本で離婚調停を申し立てるにはでも整理しています。
払われなくなったときにできること
調停調書や審判書がある場合、家庭裁判所に履行勧告を申し出て、裁判所から相手に支払いを促してもらう方法があります。費用の負担が比較的軽い点が特徴で、さらに履行命令という手続もあります。それでも支払われないときは、給与や預金などに対する差押えを検討します。
養育費のような扶養に関する債権については、給与を差し押さえられる範囲や将来分の取扱いについて、通常の金銭債権とは異なる優遇された扱いが定められているとされています。ただし、相手の勤務先や口座が分からない、収入がないといった事情があると回収は容易ではなく、どの手続が有効かは事案によって異なります。
後から金額を変えられるか
いったん決めた養育費も、取り決めの前提としていた事情に大きな変更があれば、増額または減額を求める余地があります。病気や失業による収入の大幅な減少、いずれかの再婚や扶養家族の増加、子どもの進学などが典型です。もっとも、単に生活が苦しいというだけで当然に変更されるわけではなく、資料に基づく検討と、合意または家庭裁判所の手続が必要になるのが原則です。詳しくは養育費は増額・減額できる?をご参照ください。
熊本・八代でご相談を受けるとき
話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所の調停を利用します。熊本県内には熊本家庭裁判所の本庁と、玉名・山鹿・阿蘇・八代・人吉・天草の各支部があります。八代市やその周辺では八代支部、球磨地域では人吉支部が身近になることが多いものの、どこに申し立てるか(管轄)は相手方の住所地などにより決まるのが原則です。申立てに必要な収入印紙は子ども1人につき1,200円とされています(全国一律)。一方、予納する郵便切手の種類や金額は庁ごとに取扱いが異なりますので、申立て先の裁判所にご確認ください(2026年9月時点の情報です。最新の情報は裁判所の公式サイトでご確認ください)。
また、DVやモラハラ、付きまといがあり相手と顔を合わせることに不安がある場合は、待合室を分けてもらう配慮や、住所を相手に知られないようにする取扱いを、申立ての際や期日の前に裁判所または弁護士へ申し出ることができます。八代など生活圏が近い地域では離婚後も接点が残りやすく、安全面の不安は最初にお伝えいただくことが大切です。ご相談では、算定表の当てはめだけでなく、進学まで見据えた期限の書き方と、公正証書か調停かという形式の選択を一緒に整理していきます。
まとめ
養育費の金額は算定表を目安に幅で示されるのが一般的ですが、学費や医療費など別途話し合う余地のある費用もあり、具体的な金額は個別の事情により異なります。そして実際に多いお困りごとは「金額は決めたのに払われない」という事態です。強制執行認諾文言のある公正証書や調停調書といった形式を整え、「何歳の何月まで」を明確にしておくことが、子どもの生活を守る現実的な備えになります。取り決めの前でも後でも、不安を感じた時点で早めにご相談ください。
監修:弁護士法人Si-Law(熊本県弁護士会所属・熊本市/八代市) 弁護士紹介 / 最終更新:2026年9月7日
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案の結論を保証するものではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。