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2026.7.15コラム
モラハラを理由に離婚できる?証拠の集め方と進め方を弁護士が解説

「殴られてはいないけれど、人格を否定される、無視される、夜中まで責め続けられる。一緒にいると自分が壊れていく気がする」——熊本市や八代市でご相談をお受けしていると、こうしたお話を伺うことは少なくありません。いわゆるモラルハラスメント(モラハラ)は、あざや骨折のように形に残りにくいため、「証拠がないから離婚できないのではないか」と何年も我慢されている方も多くいらっしゃいます。この記事では、離婚・不倫のご相談を多く扱う弁護士の視点から、モラハラを理由とする離婚の法的な位置づけ、記録の積み上げ方、そして相手が話し合いに応じない場合の進み方までを整理します。

モラハラの証拠になりやすいもの
図:モラハラの証拠になりやすいもの

モラハラを理由に離婚できるのか

まず、相手が離婚に同意する場合は、理由がモラハラであっても夫婦の合意によって協議離婚をすることができます。この場合、モラハラがあったことを証明する必要はありません。問題になるのは、相手が「離婚しない」と拒むケースです。モラハラをする方は「自分は悪くない」「あなたのために言っている」と考えていることも多く、話し合い自体が成り立たないこともあります。

相手が応じない場合、家庭裁判所の調停、さらには訴訟を見据えることになり、民法が定める離婚原因のうち、一般には第770条第1項第5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかどうかが問題になるのが原則です。ここで見られやすいのは、一度の暴言や一回の口論ではなく、言動の継続性と程度、そしてそれによって夫婦関係が修復困難になっているかという点です。長期間の積み重ねをどこまで具体的に示せるかが、実務上の分かれ目になりやすいといえます。

モラハラとされやすい言動の例

ご相談の場で語られることが多いのは、次のような類型です。

  • 「役立たず」「誰のおかげで生活できていると思っているのか」など、人格を否定する言葉を繰り返す
  • 気に入らないことがあると数日間にわたって無視する、深夜まで一方的な叱責を続ける
  • 実家への連絡や友人との外出を制限する、行動や通信履歴を細かく監視する
  • 十分な収入があるのに生活費を渡さない、支出の使途を過度に責め立てる
  • 子どもの前で配偶者を侮辱する

もっとも、これらに当てはまれば当然に離婚が認められるというものではありません。夫婦喧嘩の延長と評価されるものから、婚姻関係の破綻を基礎づける事情と評価されるものまで境界は曖昧で、言動の内容、頻度、期間、家庭生活への影響など、個別の事情により異なります。逆に、上記の類型に当てはまらない行為が問題とされる場合もあります。

証拠が要になる理由と集め方

モラハラは家庭という密室で起こることが多く、第三者の目撃者がいないため、「言った・言わない」の争いになりがちです。そのため、客観的に確認しやすい形で残せているかが重要になります。実務でよく用いられるのは、次のような資料です。

  • 録音・録画:自分が会話に参加している場面で、暴言や威圧的な叱責を記録したもの
  • 日記やメモ:日付、時刻、場所、言われた言葉、子どもが同席していたか、自分の体調変化などを具体的に記載したもの。後からまとめて書いたものより、その都度記録したものの方が信用されやすい傾向があります
  • メッセージやメールの保存:送受信の日時が分かる形で画面を保存し、可能であればバックアップも取る
  • 医療機関の受診記録や診断書:不眠や抑うつなどで受診した記録、通院履歴
  • 相談記録:市町村の窓口、配偶者暴力相談支援センター、警察、弁護士などへ相談した日時が分かるもの

共通して大切なのは、日付が分かる形で残すことです。「いつのことか」が特定できると、継続性を示す材料になりやすくなります。他方で、相手のスマートフォンやアカウントを無断で操作する、住居に無断で機器を設置するといった方法で得た資料は、手続で使えないおそれがあるほか、別の紛争や責任を招くおそれもあります。集め方に迷う場合は、行動に移す前に一度ご相談いただくほうが安全です。

証拠が十分でないときの考え方

「何年も我慢してきたが、何も残していない」という方も少なくありません。その場合でも、すぐに離婚を諦める必要はありません。今日から記録を始めれば、数か月後には一定の積み上げになります。過去のメールやメッセージを整理する、体調不良があれば医療機関を受診する、公的窓口に相談した事実を残すといったことも、後の説明を支える資料になり得ます。

同居によって心身の負担が大きい場合は、別居して距離を取ることも選択肢です。安全を確保しながら冷静に今後を考えられるだけでなく、相当期間の別居の事実が婚姻関係の状況を示す事情として考慮される場合もあります。ただし、子どもの環境、生活費、住宅ローン、荷物の持ち出し、相手への伝え方などは慎重な検討が必要です。

慰謝料について

モラハラによって強い精神的苦痛を受けた場合、離婚に伴う慰謝料が問題になることがあります。ただし、認められるかどうか、また金額がどの程度になるかは、行為の内容や態様、継続期間、婚姻期間、心身への影響(通院履歴の有無など)、証拠の状況によって大きく変わります。

インターネット上には金額の一覧が出回っていますが、そうした数字はこれまでの裁判例や実務で見られる一般的な目安であり、公的な統計に基づく確定値ではありません(2026年9月時点)。客観的な資料が乏しい場合には請求が認められないこともあり、資料を拝見しないと見通しは申し上げにくいのが実際です。請求の枠組みについては離婚で慰謝料を請求できるケースもあわせてご確認ください。

話し合いに応じない相手との進め方(熊本・八代の場合)

協議が難しい場合は、家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停を申し立て、まとまらなければ訴訟を検討するのが一般的な流れです。申立先は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所などを基準に検討します。熊本県内には、2026年9月時点で熊本家庭裁判所の本庁(熊本市)のほか、玉名・山鹿・阿蘇・八代・人吉・天草の各支部があります。八代市やその周辺の方は八代支部が候補になることが多いものの、事案により異なります。管轄や手続の運用、申立てに必要な予納郵便切手などは変わることがあり、庁ごとの取扱いもありますので、最新の情報は裁判所の公式サイトでご確認ください。手続の流れは熊本で離婚調停を申し立てるにはでも解説しています。

調停では、待合室が分けられ、調停委員が当事者から交互に話を聴く運用が一般的です。もっとも、庁舎の出入りや廊下で相手と接触する可能性がゼロとはいえません。DV・モラハラ・付きまといの不安がある場合は、申立ての時点や期日の前に、待合室の分離、来庁・退庁時間の調整、住所を相手に知られないための配慮などを裁判所や弁護士へ申し出ておくことが考えられます。身の危険が差し迫っている場合には、保護命令などの制度も検討対象になります。車での移動が中心の熊本では、別居先の駐車場や通勤経路での待ち伏せといった不安が語られることもあり、相談では手続の見通しと安全の確保を分けて整理することが大切だと考えています(2026年9月時点の情報です)。

まとめ

モラハラは形に残りにくいからこそ、日付の分かる記録の積み上げが手続の見通しを左右します。相手が応じれば協議で離婚できますが、応じない場合は、言動の継続性と程度、生活への影響をどう示すかが課題になるのが原則です。今日から日記をつける、メッセージを保存する、受診や相談の記録を残すという地道な作業が、後の手続を支えます。一方で、集め方によっては使えない資料になるおそれもあります。地元での人間関係や親族のつながりがあって直接話せないというご相談も熊本・八代では多く、判断に迷う段階で公的窓口や弁護士にご相談いただくことをおすすめします。結論は個別の事情により異なりますので、ご自身の状況に即した検討を進めていきましょう。

監修:弁護士法人Si-Law(熊本県弁護士会所属・熊本市/八代市) 弁護士紹介 / 最終更新:2026年9月7日

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案の結論を保証するものではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。

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