「夫婦なのに何年も触れ合いがない」「求めても理由なく拒まれ続けている」——セックスレスはとても人に言い出しにくい悩みで、誰にも相談できないまま離婚を考え始める方も少なくありません。では、セックスレスを理由に離婚はできるのでしょうか。そこで本記事では、セックスレスと離婚の関係、裁判で離婚が認められやすい事情・認められにくい事情、慰謝料の考え方、証拠と進め方を、熊本・八代で離婚のご相談を多く扱う弁護士の視点から解説します(本記事は2026年9月時点の情報です)。

話し合いなら理由を問わず離婚できるが、裁判では「重大な事由」が必要
夫婦が合意すれば、協議離婚や調停離婚は理由を問わず成立します。セックスレスが離婚のきっかけであっても、双方が納得すれば離婚することができます。
一方、相手が離婚に応じず裁判(離婚訴訟)になった場合は、民法770条1項が定める離婚原因が必要です。セックスレスは不貞行為のように独立して定められた離婚原因ではないため、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるかどうかで判断されるのが一般的です。性交渉は夫婦生活の重要な要素と考えられている一方で、セックスレスという事実だけで直ちに離婚が認められるとは限りません。
なお、2026年4月施行の民法改正で離婚原因の規定の一部(強度の精神病)が削除されましたが、「婚姻を継続し難い重大な事由」は引き続き定められています。協議・調停・裁判それぞれの特徴は協議離婚・調停離婚・裁判離婚の違いで詳しく解説しています。
離婚が認められやすい事情・認められにくい事情
裁判所は、セックスレスの期間や経緯、拒否の理由、夫婦関係全体の状況などを総合して判断します。一般的には次のような傾向があるとされますが、事案によって評価は異なります。

- 認められやすい方向の事情:健康上の問題がないのに一方的に長期間拒み続けている、話し合いや改善の求めにも応じない、拒否に加えて暴言・無視などのモラハラや不貞行為がある、すでに長期間別居している など
- 認められにくい方向の事情:病気・けが・出産前後など拒否に正当な理由がある、夫婦双方が消極的でお互いさまの状態である、回数が少ないだけで夫婦関係自体は良好である など
反対に、相手が嫌がっているのに性交渉を強要することは、性的なDVとして問題になり得ます。「求めたのに応じないから」と一方的に責めるのではなく、夫婦それぞれの事情を丁寧に整理することが大切です。モラハラが絡む場合はモラハラを理由に離婚できるかの解説もご参照ください。
慰謝料を請求できるのはどんな場合か
セックスレスだというだけで慰謝料を請求できるわけではありません。正当な理由がないのに一方的に性交渉を拒み続け、それによって夫婦関係が破綻し精神的苦痛を受けた、と評価できる場合に、不法行為として慰謝料が問題になるのが一般的です。
金額は、セックスレスの期間、拒否の態様、婚姻期間、子どもの有無、不貞行為やモラハラの有無などによって大きく変わります。セックスレスだけが問題となる事案では数十万円から100万円前後にとどまることが多く、不貞行為などが重なると高くなることがある、というのが一つの目安です。ただし、これはこれまでの裁判例や実務で見られる一般的な目安であり、公的な統計に基づく確定値ではありません(2026年9月時点)。個別の事情によって大きく異なります。慰謝料全般については離婚で慰謝料を請求できるケースで解説しています。
証拠として残しておきたいもの
セックスレスは家庭内の出来事なので、後から「言った・言わない」になりやすい問題です。調停や裁判で事情を説明できるように、次のような記録を無理のない範囲で残しておくとよいでしょう。
- いつ頃から、どのような経緯で性交渉がなくなったかを記した日記やメモ
- 話し合いを求めたメッセージ(LINE・メール)と相手の返答
- 拒否の際の暴言などがあれば、その内容と日時の記録
- 夫婦カウンセリングや医療機関の受診を提案した経緯
相手のスマートフォンを無断で見るなど、集め方によっては別の問題を生むこともあります。迷ったときは、集める前に弁護士へご相談ください。
熊本・八代で進めるときの流れと注意点
まずは夫婦での話し合い(協議)から始めるのが一般的です。直接話すのがつらい場合は、家庭裁判所の夫婦関係調整調停を利用できます。この調停は離婚を求める場合だけでなく、関係の修復(円満)を目指して申し立てることもできます。申立て先は原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所で、熊本県内では熊本家庭裁判所の本庁と、玉名・山鹿・阿蘇・八代・人吉・天草の各支部があります。最新の管轄は熊本家庭裁判所の公式サイトでご確認ください。申立ての実際は熊本で離婚調停を申し立てるにはで解説しています。
調停では調停委員に夫婦の事情を話すことになりますが、性生活のことを話すのに抵抗を感じる方も多いはずです。弁護士に依頼すれば、伝えるべき点を事前に整理し、言いにくい部分を代わりに説明することもできます。また、先に別居を考える場合は、生活費(婚姻費用)の問題も並行して検討が必要です。婚姻費用は、離婚調停とは別に婚姻費用分担請求調停の申立てが必要になる点にも注意しましょう(婚姻費用とは?別居中の生活費を請求する方法)。
まとめ
セックスレスを理由とする離婚は、話し合いであれば理由を問わず可能ですが、裁判では「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるかどうかが問われ、拒否の理由や期間、夫婦関係全体から判断されます。慰謝料も、セックスレスという事実だけで当然に認められるものではありません。事案によって適切な対応は異なりますので、デリケートな悩みだからこそ一人で抱え込まず、事情の整理から弁護士にご相談ください。担当する弁護士は弁護士紹介でご覧いただけます。
監修:弁護士法人Si-Law(熊本県弁護士会所属・熊本市/八代市) 弁護士紹介 / 2026年9月11日 公開
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案の結論を保証するものではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。